目指すべき病院の理想像へ_回復期リハ医療の本質を考える
昨年、京都近衛リハビリテーション病院では高まる周囲からの期待に応えられる病院へと一層レベルアップするために多職種で現状や課題を共有、「やりがいと活気があり、患者様から選ばれる病院」を目指すべき病院の理想像として意思統一を図りました。そして、その理想を実現するために掲げたキーワードは「ホスピタリティ」「連携」「教育」の3つです。(リンク)
同院では2019年末に「多職種教育委員会」を発足し、1月16日(金)に院内勉強会を初めて主催しました。今後、月1回程度を目安に病院組織、個人としてのスキルアップの機会を設けて行きます。
第1回のテーマは「回復期リハビリテーションとは ―チームカンファレンスの目的―」としました。約20年前の2000年4月に制度化され、今となっては当たり前の存在となった回復期リハ病棟。現在の仕組みや制度は若手も含めて理解しているものの、その「背景」の理解には差があります。背景や経緯を知り、回復期リハ病棟の本質的な役割を多職種で考え、再認識することを狙いにテーマ設定しました。講師は、京都大原記念病院 副院長で、同院がリハ医療に転身した時から在籍し、現在では回復期リハ病棟協会会長を務める 三橋尚志 医師が講師を務めました。
講義のポイントは5つ。
1)回復期リハ_制度化の背景
1973(昭和48)年の老人医療費無料化などを機に病床が急増。結果的にケアに当たる人手不足などにより寝たきり患者が増加。1988(昭和63)年に老健施設ができたが、集中的にリハビリに取り組む環境は未だ不足していた。
2)回復期リハ_当初の役割
2000(平成12)年に回復期リハ制度と介護保険が制度化。基本的な考えは「リハビリテーション前置主義」。要介護状態、もしくはその見込みとなった時に、まずは集中的にリハビリに取り組み状態を軽減する。それを担う場として回リハ病棟ができた。
3)質の評価
2008年に質の評価が導入された。基本的に医療の質の評価にはアウトカム(成果)、プロセス(過程)、運営体制(構造)の3つの視点がある。当初、回リハでは日常生活動作(ADL)を改善し自宅に帰すこと(在宅復帰率など)に重きが置かれた。近年は成果面で一層効率的に、改善効果を発揮することが求められるようになっている。
4)指標と本来の役割
未だに「家に帰せば後は知らない(≒指標を満たせばよい)」といった認識を持つ人も未だにいる。回復期リハとしてどこまでやるかは難しい問題だが、家に帰ってからの生活が大切であることは強調したい。その基本が「カンファレンス」である。
5)適切なカンファレンス運営
回復期リハは訓練室だけでなく、その合間の時間の病棟での過ごし方も大切になる。そこには医師、看護師、セラピスト、介護職など非常に多くの職種が関わる。患者さんが「家庭で安全に過ごす」「色んな楽しみができるように」退院後の生活を見据えて支援することが大切。そのために、専門職としてのスタッフの目線を交わし、家族や患者さんと直接話すことを大切にしている。カンファレンスは医師への報告会ではない。患者さんに一番身近に寄り添う介護職の存在も非常に重要性を増していると感じている。
講義後はチームに分かれてグループワークを実施。チェックシートを用いて日々のカンファレンスが適切に行われているかを多職種で振り返りました。運営面の工夫や改善点、そして「自分たちは理解してもらいやすいよう話しているつもりでも、患者様や家族様が内容をどの程度理解してくださっているか。そうした面での確認と意思の共有なども今後一層工夫していきたいといった声が聴かれました。
様々な背景を持つ多くの患者様と向き合うなかで、絶対的な正解はありません。そのなかで、各職種がそれぞれの専門的視点を活かしてディスカッションし、向き合うことが大切です。そのためにも事前の準備、目的意識を明確にし、適切なチームカンファレンス運営を通じて目の前の患者様の支援にあたりたいと思います。
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