ドクター登場!大道 卓摩 医師(神経内科)頭に水がたまって 歩けない ~特発性正常圧水頭症について~
「ドクター登場」とは、京都大原記念病院グループの医師 が趣味や最近の取り組みなど身の回りの話題に、医師ならではの目線も織り交ぜてご紹介するエッセイのコーナーです。
今回は、8月から着任された京都近衛リハビリテーション病院の常勤医 大道 卓摩 医師(神経内科)のコラムです。
みなさまこんにちは、京都近衛リハビリテーション病院の大道です。
私が7月まで勤務していた京都大原記念病院には、腰椎症、骨折、脳卒中やパーキンソン病というご病気によって歩きにくくなったご高齢の患者さんがリハビリのため、数多く入院されてきます。しかし、その中には、実は、別の頭の病気を同時に患っていて歩きにくくなっておられる場合もあります。その病気の1つが特発性正常圧水頭症です。特に原因がなく(特発性)頭の中の圧力を上げない(正常圧)ので頭痛もなく、徐々に水が溜まってくる(水頭症)病気です。
この病気が疑われる患者様は現在国内に30万人以上いると言われていて、そのほとんどが65歳以上です。そして、この病気の症状は特徴的です。歩き方は、ガニ股で歩幅が小刻みになってすり足になり、方向を変える時や歩き始めに足が出せなくなりこけやすくなります。そして、歩きにくい以外に、意欲や集中力がなくなるといった認知症の症状や、トイレが非常に近くなり間に合わなくて失禁してしまう排尿の問題が出てきます。
これらの症状があって、画像検査(CT、MRIなど)で、特徴的な頭の中の不自然な水の溜まり方があれば、病気の疑いが強くなります。病気を強く疑えば、頭の水を腰から抜いて一時的に歩きやすくなるかを確認する検査を行います。そして、最終診断と治療は、頭の水を抜く手術をすることです。手術は、髄液シャント術という溜まった水を流す管を体に埋め込む手術です。
最近は、医療者の中でこの病気の認知度も上がってきて、全国での特発性正常圧水頭症に対する手術件数は増えています。しかし、疑えば即手術とはなりません。その理由は、①患者さんが高齢であるため、他の病気を持っておられることが多く、手術をしても他の病気のために症状が良くならないことがある②水が溜まっていることが直接命にかかわるわけではない③水が溜まっていても症状がない場合もある―からです。
私は、入院中の患者さんにこの病気が強く疑われれば、ご本人とご家族に説明し、手術により症状がよくなる恩恵がリスクより大きい場合に、ご本人が希望されれば手術の依頼をするようにしています。
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