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「人の縁に恵まれた人生、私にできることでお返ししたい」~看護師の想い~

「また、笑顔でお会いしましょうね」

そうしたためられた1枚のクリスマスカードが、施設で暮らすある女性のもとに届いた。送り主は京都近衛リハビリテーション病院の樹山看護師。女性が、同院を退院され施設に入所されてから約3年間、クリスマスやお正月など季節の節目に手作りのメッセージカードを贈っているそうだ。他に受け持つ患者様にも同じように退院時にはカードを贈っている。樹山看護師本人曰く、「人の縁に恵まれた人生」がその行動の源になっているという。その想いを尋ねた。

京都近衛リハビリテーション病院 樹山看護師

看護師は患者様にケアを提供する。
でも元気をもらうのは看護師だと思う。

クリスマスカードをお贈りした女性は、約3年前に京都近衛リハビリテーション病院で担当した患者様です。当時は開院したて(2018年4月開院)で、私自身もクリニックから転職して来て間もなく、久々の病棟勤務に不安の塊でした。経験豊富でテキパキ仕事をこなす同僚に比べ、分からないことだらけの自分を情けないと思えてくる。女性が入院されてきたのはそんな時でした。

実は女性には最初、冷たい印象を持っていました。と言うのは、毎日お見舞いに来られるご主人に「早く帰り!」と突き放されることもあったからです。ただ、だんだんとコミュニケーションが取れるようになると、そんなやり取りも実はご主人の体調を気遣ってのものであることに気づきました。目に見えるご様子の裏には別の想いがあったんですね。最初の印象とは違って実は、自分のことよりもスタッフや周りの人を一番に考える方で。私もしだいに子育てや家庭のことなども相談するようになりました。力になってもらっていました。看護師は患者様にケアを提供します。ですが、励ましてもらったり、元気をもらうのは看護師のほうかもしれませんね。

今度は私が力に―。

女性は退院後、京都大原記念病院グループの介護老人保健施設 博寿苑に入所することが決まりました。しかし、退院日が近づくにつれ、施設に移ることへの不安を口にされるようになりました。病棟では、周りに自然と人が集まるようなお人柄で、他の患者様ともとても仲良くお話しされていた人が「施設にいっても、お友達ができるのかな・・・」って。

そんな様子に今度は私が力になりたいと、カードを贈ることにしました。気づけば3年。特別なことではないんです。私も支えられたから、今度は私が支えたい。少しでも素敵なものをお贈りしたいと思って、「遊書」を習ったり、今年はタイミングが合わなかったですが、これまでは娘と一緒に考えながらカードを作っていました。この女性だけでなく、担当の患者様が退院される時には、皆さんにお贈りしています。

遊書:躍動感ある筆運びと、透明感あふれる墨色で漢字の意味合いをわかりやすく、美しく、面白く表現する新しい考え方の書道(一般社団法人遊書の会ホームページより)

 

人に支えられて看護師に。

看護師になる前は、百貨店の宝飾品販売やアパレル関係の仕事をしていて、看護学校に入学したのは33歳の時でした。2人目を産んですぐ。まだ下の子が生後半年くらいだったかな。子供にはかわいそうなことをしたと思う面もあります。

忘れもしませんが、保育園で下の娘が急に「お父さんは忙しいし、お母さんは学校でお勉強やし」と泣き出して。そこに上の3歳の子が駆け寄って、慰めながら抱き合っていたんですって。その話を保育園の先生から聞かされた時は、もうつらくて。でも先生は「一緒にいる時間の長さが全てじゃない。短時間でも密な時間を過ごすことが、親子関係を作る。卑下することはない。あなたは一生懸命生きているんだから大丈夫だよ!」と言ってくれて、本当に救われました。

人の縁がつながる―。

看護学校の同級生にも、とても助けられました。10歳以上年下なんですけど、うちに来て子供の面倒を見てくれたりして。その子たちが今では30代になって、私の娘がそこへ行って、いろんな人生の相談をしているんですよ。そういうご縁がつながっています。自分は人に支えられて生きていると心から思います。だから自分のできる限りのことで、人に返したいと思っています。

 

夫の言葉に一念発起して病棟復帰を決意

50歳を前に夫から「もっと患者様にぐっと関われる所で働きたいんじゃないか?俺たちも協力するし。もう最後のチャンスやで。」と言われて、もう一度、病棟で働くことにしました。と言いつつも、病棟復帰して初めての夜勤の日に洗濯機の使い方が分からなくて電話をかけてきたのは笑い話ですが(笑)。

それまでは、クリニックで一日に何十人も患者様を対応していました。なかなかじっくり患者様に関われず、関係が途切れてしまうことに違和感を持っていた矢先でした。夫の言葉に一念発起しました。

最初は不安しかなくて毎日泣きそうだったけど、本当に同僚が良くしてくれました。そういう所でも人に支えられているなと思います。だから自分ができることは誰かに返したいなと。周りのスタッフが結婚したり、子供ができたりしたら、少しでも力になりたいと思っています。

 

患者様の「隠れた想い」を汲み取る

患者様、ご家族を身内だと思って接しています。父が末期がんで入院していた時、看護師さんの行動を見ていて「こんなことをしたらちょっと、、、」と思うことがありました。患者様は、遠慮してなかなか思ったことを言えない部分があります。だからこそ表に見えない隠れた想いを汲み取りたい。家族だったらいろいろわかるじゃないですか。そんな顔をしているけど、実はこうして欲しかったんじゃないのかとか、口調はきついけど、実はそうじゃなくて、違う想いがあるんじゃないのかとか。だから、いつも身内だと思って接しています。

あとは、「その日にできることは必ずその日にする」ということは看護師になった時から心がけています。どんなに状態が安定している患者さんでも、明日何が起こるか分からないですよね。だからその日の自分のベストは尽くす、というのは徹底しています。

自分にできることで人を支えたい―。

音楽療法に興味があります。
心理学を学びに、大学院にも行ってみたい。
勉強していたリンパマッサージをケアに取り入れたい。
やりたいことは沢山あります。これまで支えられてきた人の縁に、自分のできることで人に返していけるように。たくさんチャレンジしていきたいと思います。

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