お知らせ

【外部発表のご紹介】多職種のチームで連携し、症状の悪化を防ぐことができた症例

日々提供するリハビリテーション医療がより良いものとなるよう、様々なテーマで各職種が研鑽に努め、学会などでの外部発表などに取り組んでいます。本日はその一例として当院の看護師(所属は発表当時)が発表した「 NICD(生活行動回復看護) 」をテーマとした演題をご紹介します。多職種のチームで連携し、症状の悪化を防ぐことができた症例について報告しています。   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 肺野への微振動を与えることの効果について ~重症肺炎にチームで取り組んだ一症例~   吉田実紅(京都大原記念病院 看護師)※研究当時の所属 第14回日本ヒューマン・ナーシング研究学会 2018年10月   はじめに 重症肺炎、無気肺※1を発症し人工呼吸器を装着された患者Aさん(50代後半・男性)に対し、肺本来の機能や仕組みの復活を期待し、肺への微振動を実施しました。今回はNICDを導入し、看護計画にもとづいて気道の浄化を積極的にし、また療法士との呼吸理学療法や、多職種チームでのアプローチを実践したことにより症状の悪化を妨げた症例を経験しましたので報告します。   生活行動を自立へと導くNICD(生活行動回復看護) 患者様のできることを引き出す 症例は当初、脳出血後遺症のリハビリテーション(以下、リハビリ)を目的として入院されましたが、胆のう炎を併発したことから、一時転院となり、治療を経て再度リハビリ目的で入院されました。再入院当時、両側肺炎、無気肺※1となっていたことから、人工呼吸器を装着することとなりました。主治医からは薬物治療、呼吸理学療法と同時にNICD※2開始の許可が出ました。 NICD※2導入にあたり、まず患者家族へは技術の内容と何らかの悪化のきざしを認めた場合はただちに中止し、主治医が対応することを説明、同意を得て、2017年4月~2017年8月の間に実施することとしました。 個別メニューを作成し、NICD※2研修を受講した看護師を中心に理論や実技について病棟内の他スタッフを指導、共有し、統一してできる準備をしました。リハビリを実施する時間を固定し、呼吸理学療法の研修を受けた、もしくは実施経験のある療法士によるリハビリとNICD※2を1日のケア計画の中で効果的に実施できるよう調整しました。受持ち看護師が主体となり、複数人のスタッフで呼吸状態等に注意しながら実施するなど安全面に配慮しながら取り組みました。   安全に最大限配慮し、 バランスボールを用いて微振動を実施 具体的な個別メニューは以下の通りです。 バランスボールを用いて、股関節や骨盤底筋群※3を柔軟にした後、頭の位置を調整して体幹の並びを整え※4、座る姿勢への体位変換の準備をする(図1) [caption id="attachment_285" align="alignnone" width="300"] 図1[/caption] 胸郭運動に必要な胸の筋肉にバランスボールを用いた微振動により刺激を与える(図2) [caption id="attachment_286" align="alignnone" width="300"] 図2[/caption] 半腹臥位に変え※5、バランスボールを用いて背中から微振動により刺激を与える(図3) [caption id="attachment_287" align="alignnone" width="300"] 図3[/caption] 3.の姿勢で、足の裏へも同様に微振動を行い脳へ刺激を与える(図4) [caption id="attachment_288" align="alignnone" width="300"] 図4[/caption] 入院時、A氏は両側肺炎と無気肺※1の状態で他の呼吸疾患も併発されていました。当時の検査では、白血球数が異常値(WBC※6 12,400/µL・成人の基準値:4,000~9,000/µL)を示し、また必要な栄養素が不足している状態(アルブミン値2.7・低栄養)でした。 入院3日目からNICD※2の介入は入院3日目から開始し、療法士による呼吸理学療法と同時にバランスボールによる微振動を実施しました。 入院5日目には個別メニューを作成し、病棟スタッフ間で共有し、以降は毎日実施しました。 こうした経過を経て、入院8日目には無気肺※1が改善され、2週間目には人工呼吸器を離脱、インスピロン※7へ変更することとなりました。この時点での白血球数(WBC※5 )7,200/µL、アルブミン値 3.2、血中の酸素濃度を示すSpO2 は100%となりました。白血球数、血中の酸素濃度はいずれも正常値内。栄養状態も低い水準ではありましたが改善が見られました。   苦手意識もあったが、正しく状態を理解し、 チームでアプローチした結果状態は改善 呼吸には基本的に重力に拮抗した姿勢(直立)を保つことが一番いいとの報告があります。寝かせきりになると呼吸機能の低下は避けられません。今回のように人工呼吸器を装着されている場合などは特にできるだけ背面 を支持しない空間をつくることが呼吸を助けることになります。 また、急激に状態が悪化した時に呼吸ケアを早期、かつ様々な職種がチームとして介入することで、たとえ人工呼吸器装着となっても早期の離脱や二次的障害発生率が下がり、入院日数の短縮が図れたとの報告もなされています。 これまでは人工呼吸器に対し、苦手意識や体を動かすことへの恐怖があり積極的に介入できませんでした。しかし、今回の症例では看護師が中心となって状態を理解し、早期段階から背部への微振動や、療法士らと協同で呼吸理学療法を実施できました。その結果、酸素化が良好となり、痰の排出を促すことで気道の浄化を効果的に行うことができました。また、経鼻チューブからの栄養投与を続けたことで栄養状態が改善し、水分補給もできたことで痰がベタつかず吸引しやすい状態であったことから気道を清潔にすることが出来ました。 治療の効果に加え、早期介入により、血液に酸素が取り込まれやすくなり、無気肺※1の改善と約2週間での人工呼吸器離脱を果たすことができました。チームで集中的に介入し、的確に呼吸状態を観察、評価しながら、呼吸の介助とNICD※2を計画的に実践したことが状態の改善につながったと考えています。   より一層、チームで取り組む NICDの実践へ 看護師は患者の身体の仕組みを知ったうえで障害された機能を代償する・改善できる方法を探します。保健師助産師看護師法では、看護師の業務は「 診療の補助と身の周りの世話 」とされています。これをどのように行うかは自分たちがしっかり考え、実践しなければなりません。私たち看護師の目や手はそれを見つけ、手当てするためにあります。今後、ますますNICD※2により身体の状態が改善され、苦痛から解放される患者さんを増やしていくためチームで取り組んでいきたいと思います。   抄録はこちら ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ※1:無気肺 空気をうまく取り込むことができず、肺がつぶれてしまっている状態   ※2:NICD(Nursing to Independence for the Consciousness disorder And the Disuse syndrome PAtient) 看護手技の一つで患者の生活行動回復看護と定義されています。主に寝たきりや、廃用症候群の患者様の身体的変化を生理学的、病理学的視点からアセスメントを行い、生活行動を自立へと導く、いわば患者様のできることを引き出すことを目指す看護です。   ※3:骨盤底筋群 骨盤を覆うように骨盤の底部分に位置する筋肉   ※4:体幹アライメント 姿勢分析や動作分析などを行なうときの指標・評価の対象。体幹アライメントの失調とは体幹(脊柱)にねじれや左右差があり垂直ラインが乱れている状態。麻痺側の筋緊張の低下から非麻痺側での過剰努力による固定が強まり、左右差がみられる。このために上手く非麻痺側上肢が使えず車椅子の自走や食事がとれなくなること。   ※5:半腹臥位 抱き枕に覆いかぶさるような姿勢(イラスト参照)。人工呼吸器を装着されていたため、体位変換は2人以上で行い気道確保の確認、気管挿管チューブの深さや位置、患者の表情や状態を確認しながら、同時に吸引の準備もして行いました。   ※6:WBC(white blood cell) 白血球数。個人差が大きく、また同じ人でも1日のうちに数値は大きく変動するが異常値時には様々な疾患が考えられる。高値の時に考えられる疾患に肺炎などがある。   (参考)基準値 成人 4,000~9,000/µL 小児 6,000~10,000/µL 幼児 6,000~18,000/µL 新生児 9,000~25,000/µL   ※7:インスピロン ベンチュリーマスクのことで、マスクのように装着して使用します。一定の酸素濃度を維持しながら酸素を送ることができる機器となります。  

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京都大学医学部への留学生が見学にご来院されました。

ブラウン大学 医学部(アメリカ)、エバーハルト・カールス・テュービンゲン大学 医学部(ドイツ)からの留学生3名が、京都近衛リハビリテーション病院の見学に来院されました。3名は京都大学医学部への留学で来日されており、日本の医療制度を知る目的で府内の急性期、回復期の各医療機関を見学訪問されました。今回はその一環で、京都大学医学部附属病院 加藤源太 先生(診療報酬センター 副センター長)の引率のもと、日本の回復期リハビリテーションを知る目的で来院されました。 当日は同院 岡伸幸 院長と挨拶を交わした後、同 院長補佐 児玉直俊 医師、高岡佐和子 理学療法士(同院 リハビリテーション部 管理者)が院内をご案内。病棟、リハビリテーション訓練室、屋上訓練スペース(近衛天空回廊)などを、時折、加藤先生の通訳を介し患者様とコミュニケーションを取りながら、また機器等を体験いただきながらじっくり見学されました。   見学後は、児玉医師が「 what is 回復期“kaihukuki”rehabilitation hospital ?」と題し、日本のリハビリテーション医療の仕組み、実情を織り交ぜてプレゼンテーションでご紹介しました。 日本は世界的にみても圧倒的に高齢化が進み、日本の医療を支える社会保障制度は非常に厳しい状況にあります。そんななか急性期医療はもちろん、その後を請け負う回復期リハビリテーションの意義は近年一層高まっています。私達はそこの専門家として「障害を克服する」「機能を改善する」「活動を育む」ために日々取り組んでいるとご紹介しました。プレゼンテーションでは、実際の症例映像もご紹介し、実際に患者様がリハビリに取り組まれる様子を見学した後だったこともあり「Good ! 」と感心して見ておられました。 プレゼンテーションの後は、田村さち子 看護師(病棟管理者)も合流し、様々な意見交換や質問が交わされました。そんななかで児玉医師から「リハビリ医はアメリカやドイツではどんなイメージですか?」と投げかけられました。ドイツの学生さんによると「セラピストの仕事というイメージがある。リハビリを担う医師と言うのはあまりイメージがない。」そうです。アメリカの学生からは「循環器内科から、リハビリ分野に転身されたのはなぜ?」と質問があがりました。児玉医師は「急性期循環器診療において、治療により心臓の状態が良くなっても、体力が低下し生活機能は良くなっていない高齢患者さんを多く経験した。その経験からリハビリテーションに関心を抱いた。まだメジャーな分野ではないが、近年リハビリテーションの存在感や位置づけ、重要性が高まっているのは間違いない。」と考えを述べました。引率の加藤医師をはじめ、学生3名も日本の背景や児玉医師の考えなどを聞きその重要性を知っていただけたようです。 様々な交流機会も大切に、医療の質向上を目指して参ります。  

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マジシャン Yuji 村上のマジックショー!退院後の復帰に向けて当院スタッフに披露くださいました

ステキな時間をご提供くださったのはマジシャンのYuji村上さん。村上さんは、今年の1月に突然の脳出血に襲われ、急性期治療後、京都近衛リハビリテーション病院で約1ヶ月半のリハビリテーション訓練に取り組まれた患者様です。退院を翌日に控え、いよいよ迎える現場復帰に向けた予行演習として申し出ていただき、スタッフからも「ぜひ、見たい!」と開催されました。 村上さんは脳出血の影響により左半身に症状が現れました。当院ご入院時は、指先の感覚が鈍く、狙った場所にうまく手を運べない状態でした。また、バランスをうまく保てず車いすを利用されていました。マジシャンの仕事は、手指先の感覚が大切なのはもちろん、ショーは立って披露します。手足の動き、そしてバランスを保つ能力の獲得を目標に1日最大3時間の訓練に取り組まれました。 当初は手足を支える基礎の筋力強化やマシントレーニングでの全身運動を中心に取り組まれました。徐々に長距離歩行や跳躍運動などの応用動作にも取り組まれました。訓練時間だけでなく空き時間に、トランプを使って手先の感覚を確認しながら、動きの練習を取り組まれるなど意欲的にトレーニングに励まれました。また、一時外泊された時には病気になる前から予定していたショーイベントを仲間の協力を得て無事に開催されるなど、復帰を見据えて前向きに入院生活を過ごされました。 復帰後には船上のイベント等でのマジックショーの予定もあり、その後も、主催イベントなどの予定が入っているそうです。今回はスタッフのためだけに、トランプや輪ゴムなどを使ったマジックを披露くださいました。テーブルに置いたトランプがいつの間にか他のトランプに変化している、トランプを丸ごと振るだけで4枚のキングのみを飛び出させる、スタッフがその場で選んだカードが最初から予言されている。巧みな話術で引き込みながら繰り広げられる不思議な光景に、驚きすぎて声も上がらず静まりかえる場面も見られました。ショーは終始、驚きや笑いに満ちた楽しい時間となりました。 ショーを終えて、ご本人は「出来はまだまだ。だけどせっかくの機会と思って、テクニックが必要となるものも挑戦してみた。皆さんが喜んでくれたのならそれが嬉しい。」と良い節目となった感想をお聞かせくださいました。  

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【広報誌】和音4月号を発行しました!

京都大原記念病院グループが毎月発行する「広報誌 和音4月号」を発行しました!     ★詳しくはこちら

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おかげさまで1周年!これからもよろしくお願いいたします。

京都近衛リハビリテーション病院は、この度、開設1周年を迎えることができました。   当院の開設は、本院の京都大原記念病院開設以来の一大イベントとなりました。 しかしながら、開設以降大きな事故もなく順当に歩みを進めてくることができたのは関係機関をはじめ多くの皆さまのご支援があってのものと考えております。 ここに改めて御礼申し上げます。   すべては患者様の豊かな生活のために その人らしい生活への挑戦   当院は急性期から回復期・生活期へステージが移る患者様をより早期段階から円滑に受け入れる拠点として、その後の生活期まで見据えたプログラムを提供します。 患者様一人ひとりに寄りそいながら、医師を中心とした多職種のチーム、かつ京都大原記念病院グループの総合力に基づき患者様の社会復帰を全力でサポートします。   今後も変わらぬご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。   京都近衛リハビリテーション病院 院長 岡 伸幸  

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児玉直俊医師が講演!回復期リハビリテーション病棟における心疾患合併患者のリハビリテーション治療

「複合障害を持つ患者のリハビリテーション診療を考える」をテーマにしたシンポジウムが2月24日、南区のテルサホールで催され、京都近衛リハビリテーション病院の児玉直俊医師が講演した。日本リハビリテーション医学会第4回近畿支部地方会のプログラムの一つで、同医学会と日本心臓リハビリテーション学会近畿地方支部会が共催した。 高齢患者の増加に伴い複合疾患を有する患者のリハビリ治療が必要になっている現状を背景に開かれた。児玉医師の講演テーマは「回復期リハビリテーション病棟における心疾患合併患者のリハビリテーション治療」。同病棟は脳血管疾患や運動器疾患のリハビリを行うが、患者は心疾患もあることが少なくなく、積極的な運動療法をとりにくい。また心疾患の悪化を恐れるあまり負荷量を落とし過ぎて成果が得られないことがある。 児玉医師はこのような現状から同病棟においても医師間の診療協議、運動時心電図モニターの装着、有酸素運動の併用、心疾患に関する患者教育が必要であると説明した。また、高齢心不全患者が爆発的に増加する「心不全パンデミック」時代への備えが喫緊の課題とし、同病棟でもスタッフ教育やリスク管理の重要性が高まっていると指摘した。 講演後の討論では、複合疾患患者のリハビリテーションには、他科の医師同志の連携や病病連携がますます重要であることで一致した。

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【広報誌】和音3月号を発行しました!

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【広報誌】和音2月号を発行しました!

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【 医療関係者の皆さまへ 】 当院院長 岡 伸幸(神経内科)が、Web講演会で講演いたします。

医療関係者向けWeb講演会「GSK難病知慮セミナー(主催:グラクソ・スミスクライン社)」で、京都近衛リハビリテーション病院 院長 岡伸幸が以下の通り講演いたします。ご興味ございましたら、ぜひご覧ください。   【日時】1月18日(金)19:00~20:15 【内容】末梢神経障害の側面からみるEGPAの病理、診断 【演者】岡 伸幸(京都近衛リハビリテーション病院 院長・神経内科)   ※岡医師の講演は、19:00~19:30の予定となります。 ※視聴方法はこちらをご参照ください。  https://gskpro.com/…/ja…/seminar-info/webinar/20190118NU.pdf

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【シャトルバス】1/13「全国女子駅伝」当日の運行ルート一部変更に関するお知らせ

1月13日(日)「全国女子駅伝」開催にあたり、一部ルート変更をいたします。   ㋺系統(出町柳ルート便)の2便(13時台)において、運休いたします。 ㋩系統(国際会館ルート便)の6便(13時台)において、運休いたします。   ご利用の皆様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解とご協力をお願いいたします。   --- 本件に関するお問い合わせはこちら --- 京都大原記念病院グループ シャトルバス担当 Tel.075-744-3121 (京都大原記念病院 代表)

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